【読書】:ネアンデルタール人は私たちと交配した

この本は、眼の誕生 – カンブリア紀大進化の謎を解くに引き続いて、NHKスペシャルのNHK 生命大躍進第3集『ついに“知性”が生まれた』の内容の下敷きになっているから読んだ。

今回は、初めてKindle本で購入して読んでみた。ので、その感想も含めて

Kindle本で読書をした感想

今まで、電子書籍は主に漫画コミック、雑誌を読んでいたけどテキストブックの電子書籍は初めて。
テキストブックの電子書籍で戸惑うのは、『ページと言う概念がない』と言う事だろう。コミックにせよ雑誌にせよ、基本的には紙版のハードコピーを読んでいるわけで、そこには紙の頃のままのページの概念が残っているし、見開きスタイルで読めば電子書籍であることの違和感をほぼ皆無にすることができる。
一方で、テキストブックだと画面の大きさや文字の大きさを調整することで1画面内の文字数は大きく変わり、それに沿ったレイアウトになるので非常に流動的。ページの概念がないと、やはり最初のうちは「自分が今どこを読んでいるのか」分からないので、けっこうな戸惑いを感じた。
一応Kindle本はその辺考慮はしてはあって、下の画面キャプチャのように

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章単位での読み終わる時間や

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本全体での読み終わる時間や

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仮想的な位置の目印なんかを表示して、読んでいる位置を把握できるようには務めているが、やはり紙のページの概念に慣れきっているとこの表示法は若干分かりにくく感じた。まあ、きっとKindle本をたくさん読んでいけばやがて慣れるのだろうとは思うけど。

あと、今回はタブレット(XPERIA Z2 Tablet)とファブレット(XPERIA Z Ultra)両方で読んでみたけど、スマホ(ファブレット)でもそこそこに読むことができた。やはり落ち着いて読むのならタブレットの方がずっと楽なのだけど、ささっと空き時間で読むならスマホの方中心で読み進めても問題ない感じだった。

この本について

この本は、著者のスヴァンテ・ペーボ氏がネアンデルタール人のDNAゲノムをすべて解読し、現代人種ホモ・サピエンスとの関係性を論ずることができるまでたどり着く約30年にもわたる半生を自伝的に扱ったもの。
本の中では、最初医科学生だったりエジプトのミイラに興味を持っていた学生時代の話から始まり、ふと思いついてスーパーで買ってきた牛のレバーからDNAを読み解く実験をしたことから、現在生きているものではない、死んでしまったものからDNAを取り出すことに挑戦していくようになる。最初はエジプトのミイラからDNAを抽出する挑戦に始まり、(そしてそれは論文となり注目を浴びたものの結果的には失敗であった)、その後訪れる『古代DNA』、特にジュラシックパークが流行りまくっていた頃の古代DNA抽出は不可能であることを示すお話や、その後分析時の汚染(コンタミ)を恐れるがあまりクリーンルームを作り始めるお話、そして研究所の所長となってプロジェクトを進めるようになり、他者との研究競争になる日々などを痛快に書き連ねている。なぜかゲイであることをカミングアウトしてたり、まあ変なお話もいろいろ混じっているけど面白い。

僕も大学生の頃、のべ二か月ほどクリーンルームでの分析作業をやったことがあるけど、日々コンタミとの戦いで、作業項目によっては作業後クリーンルームに入れず帰宅したりした記憶などが懐かしく思い出された。また、自分が学生の時にはあまり気にしなかったけど、古代ネアンデルタール人のゲノム解析にはコンタミだけではなく収率(いかに少ない試料から効率よくデータを回収するか)などの話も書いてあって、あー『はやぶさ』が帰還した時に回収した岩石(とも呼べないかもしれない砂粒)でも、ごく微量なものからごく微量な数値を検出する苦労と似ているなあなどと思ったりした。

ネアンデルタール人の謎、こうやって解いた | 今週のHONZ | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
↑最初、たまたまスマホのニュースアプリで↑の記事を読んで興味を持ったので、NHKスペシャルにも合わせて読んでみたのだが、かなり満足する内容だった。
ぜひ、他の方にも読んでみてほしいと思う。

Android:Twidereの設定を強引に変更する

僕はAndroidのtwitterアプリに、純正ではなくTwidereを使っている。
別にさしたこだわりがあるわけではないのだけど、純正は使いたくない微妙にひねくれモノの性格と、たまたまtwitterを見始めた当時に適当に検索して評判良さそうなソフトを入れたらTwidereだったというだけだ。
ところが、このソフト結構いい加減で、設定項目でチェックしているにも関わらず設定が有効になっていなかったり、そもそも過去には設定があったはずなのに消滅している項目があったりする。
そこで、やや強引な方法で設定を保存してしまおうというのが今回の記事の趣旨だ。

まず、Twidereの【設定】 – 【その他の設定】 – 【設定の保存/読み込み】から、設定のエクスポートをする。エクスポートしたファイルを見ると、『Twidere_Settings_YYYY-MM-DD_HH-MM-SS.zip』と言う形式で保存されている。この設定ファイルをPCなどに移してzip解凍すると、

と言うjsonファイルが入っている。ここから、『preferences.json』をテキストエディタで開くと、設定が

<code>
{"profile_image_style":"round","leftside_compose_button":false,"consumer_key":"YVROlQkXFvkPfH3jcFaR4A",
"auth_type":0,"refresh_on_start":false,"consumer_secret":"0UnEHDq5IzVK9nstiz2nWOtG5rOMM5JkUpATfM78Do",
"quick_send":false,"compact_cards":false,"tab_display_option":"both","theme_font_family":"sans-serif-light",
"api_url_format":"https:\/\/[DOMAIN.]twitter.com\/","database_item_limit":100,"refresh_after_tweet":false,
"remember_position":true,"compose_now_action":"compose","media_preview_style":"scale","theme_background_alpha":160,
"name_first":true,"card_highlight_option":"background","indicate_my_status":true,"fast_scroll_thumb":true,
"dns_server":"8.8.8.8","quote_format":"RT @[NAME]: [TEXT]","pebble_notifications":false,"link_to_quoted_tweet":true,
"read_from_bottom":true,"unread_count":true,"show_absolute_time":true,"sort_timeline_by_id":false,
"tcp_dns_query":false,"preload_wifi_only":false,"theme":"twidere","no_close_after_tweet_sent":false,
"enable_proxy":false,"text_size_int":16,"hide_card_actions":false,"same_oauth_signing_url":false,"media_preview":true,
"card_animation":true,"refresh_interval":"240","load_item_limit":100,"no_version_suffix":false,
"phishing_link_warning":true,"display_sensitive_contents":false,"display_profile_image":true,"theme_color":-14208398,
"thumbor_enabled":false}
</code>

などといった形で保存されていることが分かる。ここで、『”XXXXXX”:nnnn,』と言う形式が一つの設定データになる。とりあえず僕の設定ファイルから以下のような設定項目を抽出できた。
(以下、設定項目は本来全体を{}でくくり、,で区切っているデータだが見やすくするため項目ごとに改行して示してある。また、データ項目の順番は関係ないのでabc順にソートして示す。)

全項目解説するのは面倒だし、そもそも僕もデータ項目名から推察しているに過ぎないので、詳細は語らない。
これらの中でいくつかピックアップすると

■show_absolute_time:true
旧Verでは存在したが、今は設定を探しても見つからない項目、この項目を入れるとツイート時刻を相対時刻ではなく絶対時間で表示できる。(↓の画像参照)

Screenshot_2015-07-13-16-19-29

僕は「mm分前」と言う形で相対時刻で表示されるより、「hh時mm分」と言う形の絶対時刻で表示されるほうが好きなのでこの設定は絶対に入れている。余談だが、twitterの世界ではどちらかと言うと相対時刻表示を推しているようである。と言うのも、時差のある地域を横断的に移動する人から見て相対時刻の方が見やすいからだそうだ。日本から出ない人なら絶対時刻の方が絶対便利だと思う。

■read_from_bottom:true
ツイートを更新した時に、更新したツイートの一番下にフォーカスする設定。一時期この設定項目を見失って、毎回更新するたびに前回の最新の書き込みまで戻ってツイートを読んでいたので、えらく使いにくかった。

Screenshot_2015-07-13-16-21-29
現在この設定は【設定】 – 【ツイート】の中にある。

その他は説明を省略する。
で、必要な項目を設定変更し終わったら、再びzipで固めてTwidereに設定をインポートする。
そうすると好みの設定に変更できるのだ。

【読書】転記:月刊天文ガイド2015年06月号より

久しぶりに天文ガイドをパラパラと読んでいたら友達の研究結果と思しき記事を発見したので転記。

via 月刊天文ガイド2015年06月号 page10 Astro News JUNE 2015

天の川銀河の回転速度を精密に測定

鹿児島大学の研究者などからなる研究チームは、大質量星形成領域 IRAS 20143+3634にある水メーザー天体の観測を行い、太陽系付近での天の川銀河の回転速度を、これまでよりより精密に測定することに成功した。

太陽系は天の川銀河の中心のまわりをほぼ円を描いて回っており、IRAS 20143+3634も太陽系とほぼ同じ円周上を回っている。この天体までの距離や固有運動を精密に測定するこことができれば、太陽付近での天の川銀河の回転速度を精度よく導き出すことができる。

研究チームはIRAS 20143+3634に含まれる、水メーザーを放射する天体を約2年間にわたって観測し、IRAS 20143+3634までの距離として8870光年、固有運動から計算した太陽付近での天の川銀河の回転角速度として、1キロパーセクあたり秒速27.3±1.6km(通常の速度で表すと秒速232km)という値を得た。この値は国際天文学連合が採用している秒速25.9km(同秒速220km)より大きく、最近のVERAなどによる観測結果を裏付けるものとなっている。

まあ読んだだけではなんのこっちゃ? と思うかもしれない。以下僕の解釈。

まず、地球が太陽の周りをまわっているように、太陽も銀河系の中でグルグルまわっている。で、今回の記事はその回転のスピードを調べたというお話なんだけど、そもそもなんでそんな回転スピードを調べる必要があるの? と言う疑問が沸いてしまうだろう。
まあ「単純な知的好奇心」で片づけてもいいんだろうけど、それじゃつまらないので一つ理由を探ってみると、「銀河系の中のダークマターの測定」ってことになるのだと思う。

実は、今分かっている銀河系の中の太陽などの回転速度は、現代物理学と矛盾する。
高校の物理で習うように、太陽と地球の関係とか、地球と月の関係を調べていくと、『ケプラーの法則』が導かれる。大きい天体の周りを小さい天体がグールグル回っていて、なおかつその回転速度は計算で求められる、という法則なのだけど、これを銀河系にあてはめるとどうなるか?
銀河系でも、もちろん中心(銀河系の場合には中心天体があるわけではないので仮想中心質点ってことになるけど)の周りを太陽がグールグル回っている。ところが、その回転速度がケプラーの法則で導かれる数字よりずっと大きいのだ。
この矛盾をどうするか? と言う問題において、現代物理学では『ダークマター(暗黒物質)』と言うものを想定している。つまり、ケプラーの法則は正しい、でも銀河系でそれが成り立たないのは、現在の人類が観測できていない謎の重力原、ダークマターがあればいいと結論付けて矛盾を回避しているのである。

ということでお話の最初に戻ると、銀河系の中での太陽の回転速度を求めるということは、銀河系の中にあるダークマターの量を求める、ということにつながるのだ。今回の研究によると、今までに比べて太陽の回転速度は速かった。ということは、銀河系の中のダークマターの量(少なくとも太陽と同じ円周上での量)が今まで見積もられていたものよりも多いのでは? と言う結論を結びだしているって話になる。

まあ、他にもお話があるのかもしれないけど、以上がこの記事から読み取った僕の解釈。

Android:新しい音楽アプリを導入した

ちょっと気分転換に、スマホに新しい音楽アプリをいくつか入れて試したので、その辺のレビュー。

まず、僕が探しているのはあくまでスマホの(SDカード側の)ローカルに保存してある音楽ファイルの再生アプリであって、クラウドに保存してあるファイルの再生でもないし、最近流行りの定額音楽サービスアプリでもない。
あと、タブレット端末(XPERIA Z2 Tablet = SO-05F)には基本的に音楽ファイルもアプリも入れてない。スマホ(XPERIA Z Ultra)の方だけのお話(単にタブレットにもファイル突っ込むのが冗長に感じるのとタブレットで音楽聴かないだけ、たぶん同じ操作をすれば動くとは思うんだけど)。
それから、音源のジャンルは基本アニソンで(アニメのOP/ED曲、ないしはアニメのサウンドトラック)。J-popは数年前から流行を追いかける気がなくなった。アタマ空っぽにして聴けるサントラが一番好きである。

で、僕が希望するアプリとしては、僕は割と几帳面に音楽ファイルをフォルダ管理しているので(音楽は母艦PC含めて【大雑把なジャンル】\【アーティスト名ないし番組名】\【アルバム名】\【トラック番号 – トラック名】.mp3と言う形式で管理している)、タグやジャンルやらアーティストやら評価やらなどの管理区分を設けているアプリにはあまり興味なし、フォルダ管理(あるいは代替にプレイリスト管理)出来るアプリの方が好ましい。
また、母艦PCには.lrcファイル(歌詞ファイル)が結構入っているので、歌詞を表示できるアプリの方が面白いかなあと思う。
あと、高音質な方が望ましいが、イコライザーやら何かしらのバーチャル効果を生むようなプラグインで再生するのは好ましくない。素の方が好きである。と言うことで、XPERIA Z Ultraには音の設定の中にサウンドエフェクト:ClearAudio+とダイナミックノーマライザーと言うのがあるが、こいつらは是非OFFにすることを推奨する。少なくともイヤホンで聴く限りはこれらのサウンドエフェクトはクソである。スピーカーで聴いたときには良い効果があるのかもしれないが、XPERIA Z Ultraは改造しない限りスピーカーはモノラルなので、音質もへったくれもないと思う。

最初に検討して除外したのはWalkmanアプリ(現ミュージックアプリ)。SONY謹製の、ウォークマンの名を冠して(いた)アプリである。何が好まないって、SONY系の?音楽マーケッティングも兼ねているようでオススメな音楽を売ろうと思うのか、僕のスマホに入ってない音源のアルバムアートとかを表示されて困惑したりしたのである。たぶん設定で消せるのだろうけど。
ただし、先に結論を言うような感じだけど、Walkmanアプリは現時点では唯一のlrcファイルから歌詞を吸い出してくれるアプリのようである。
lrcファイルは、音楽ファイルと同じディレクトリに同じファイル名で(拡張子が違う)おけばいい。なお、lrcファイルはShift-JISでは文字化けするようでUTF-8にしておく必要があるようだ。そこから先は、先人のブログを参考にしていただければと思う。
WALKMAN用に作った自作歌詞(LRC)をXperia製品でも楽しもう! : ソニーで遊ぼう!

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実際に歌詞を表示させてみたの図。正直言って苦笑に近い爆笑である。歌詞表示させてる意味ねえ(笑)。

次に検討して、まあ今までメインで使ってきていたのがPowerAMPアプリである。はっきり言って、使い勝手はWalkmanアプリとどっこいどっこいである。こっちの方が、ローカル以外のアルバムアートとか出さない分マシかな、程度である。音質がいいとか言う評価を見たけど、自分で聴き比べた限りではあまり差はないように思う。PowerAMPアプリ単体でイコライザが適用できるのが多少いいのかもしれない。
あとこのアプリにはプラグインでMusixmatchと言うのを入れると歌詞表示ができる。僕も試してみたがローカルのlrcを参照するのではなくどっかのデータベースから拾ってくるらしく、日本語の歌詞はローマ字だったりした。ナンセンス。フローティングウィンドウなのも気に食わなくて、僕はこのプラグインを使用するのはやめてしまった。
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実際の再生画面。アプリの話と関係ないけど、茅野愛衣があの超有名ヤンデレ曲を歌っているのは必聴であります。

ついでに検討して、結局採用しなかったのがプチリリと言うアプリ。このアプリの売りは、何と言っても歌詞表示。こっちの歌詞もデータベースから拾ってくるタイプ(自分でlrcからデータベースに登録も出来るようである)だが、日本語曲もちゃんと日本語表示してくれるし、単語単位でのカラオケ表示などしてくれるのもなかなかおしゃれだと思った。
がそれ以外の売りがあまりないのと、広告がやたら目立って目障りだったので僕はbyeした。

最後に、僕のメインアプリになりそうなのがLISNA。フォルダツリー型音楽プレイヤーと銘打っているように僕みたいなフォルダ管理をしている人にはピッタリなアプリである。音楽ファイルを管理するrootディレクトリの位置を好きに設定できるので、SDカードのMyMusicsと僕が名づけたディレクトリをルートにしておけば非常にシンプルに楽しむことができる。

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こんな感じで、シンプルイズベストの画面。アルバムアートすら表示しないいさぎよさ。非常に快適である。

とまあ、いくつか試してみた。
僕はアニソン(OP/ED曲)を適当に集めてシャッフルで聴き、サントラはアルバム単位ないし番組単位でトラック順で聴くので、アニソンをPowerAMPで、サントラをLISNAで聴く形に落ち着きそうである。
複数のアプリを入れれば聴き方のスタイルを変えられるのは昔のDAP(つまりWalkman)と違って新鮮な感想だった。手持ちのウォークマンは処分しようと思う。

【読書】:眼の誕生 – カンブリア紀大進化の謎を解く

今回、この本を選んだのは、ちょうどNHKスペシャルでNHK 生命大躍進と言う番組をやっているからである。
この本は、ちょうど、第1集「そして“目”が生まれた」の内容の下敷きになっている本の一つ。

この本の結論は、「光スイッチ説」と言うものの提唱である。もう少し解説すると、地球における生物の進化を紐解いていくと、約5億4300万年前に始まるカンブリア紀に、突如動物の種類・個体数が増加する『カンブリア爆発』と言う現象があったこと(さながら『進化のビッグバン』とも呼ばれている)が分かっているのだが、なぜこの時期に生命が急拡大したのかが分かっていなかった。本書は、その疑問に対して、「この時期に生命が『眼』を獲得する、と言うイベントがあった。(つまり光を受信できるようになった。)これが引き金(スイッチ)となって、動物の爆発的な繁栄につながった」と結論付けるものである。
とまあ、結論から書いてしまうと結構身も蓋もない中身なのだけど、その仮説を提唱するにあたって現代生物学、古生物学、物理(光)学等の知識をフルに活かして迫っているのがすごい。

現代生物学の観点では、「光」があることの意味をまず考える。地球上で光の届かない深海や洞窟内での生物の適応、あるいは特に光満ち溢れる熱帯の昆虫上に見られる色彩などを通して、進化と光が切っても切れない(進化に対する淘汰圧が高い)ことを説明していく。

一方、古生物学の視点では、バージェスなどで発見された非常に状態の良い化石の微構造を電子顕微鏡で調べることで、古代の生物たちが構造色を持つ=古代の生物たちは非常にカラフルな形態をしていたことを明らかにしていく。

さらに、古生物たちの「眼」の構造にも迫っていく。カンブリア紀に地球を支配していた動物はそのほとんどが節足動物門であり、そのほとんどが複眼構造を持つのだが、その構造も電子顕微鏡で丹念に追っていく。三葉虫の複眼が方解石で構成されていたなんて僕は知らなかった。

また、進化速度を実際に計算した結果も載っているのも面白い。例えば、脊索動物門の持つカメラ眼構造は、初期のただの感光細胞から魚類の持つ程度のカメラ眼構造に進化するまで、およそ365,000世代と見積もっている。一世代一年とすれば、眼の複雑な進化は50万年もかからずに進化できるのだ。

これらのような丹念な観察から、最終的に光スイッチ説にたどり着く壮大な話は読んでいてワクワク感を覚える。また、本書の中に具体例として挙がってくる動物たちも面白い。グソクムシなど、日本で断食しているダイオウグソクムシがブームになるよりずっと前に取り上げられていたのだな、とびっくりする。カンブリア紀の動物たち、アノマロカリスに始まりオパビニアやハルキゲニアなど、奇妙な生物群を見るのもとても面白い。

なお、この本では最後に一つに疑問を残す。『何が眼の進化の引き金となったのですか』である。この本では、銀河系に話が飛んだり海の透明化に話が飛んだり、今一つこの疑問は解決されていない。僕が以前読んだ凍った地球 – スノーボールアースと生命進化の物語に出てくるアースボール仮説も可能性の一つとして挙げられている(が残念ながら、アースボール仮説とカンブリア爆発とではタイムラグが大きく、ここを埋める説明ができない)。
で、今回のNHKスペシャルではロドプシンと言う光を受容する遺伝子が、植物から動物へジャンプした説を提案している。「じゃあ、なぜこの時期に遺伝子のジャンプが起こったの?」と言う疑問を持ってしまうと疑問の連鎖の中に沈んでしまうのだけど、ここを追求するのもまた面白いだろうなあと思った。