NE5105T018G1-1070H 簡単なレビュー(と、トリッキーなトラブル解決の顛末)
Palit Microsystemsのビデオカード、NE5105T018G1-1070H (GeForce GTX1050Ti 4GB KalmX) [PCIExp 4GB](国内ではドスパラが独占販売)を購入したので、簡単なレビュー。
簡単なレビューと言うよりはむしろ、使えるようになるまで結構四苦八苦したのでその顛末を備忘メモ。
今までメインマシンのビデオカードに、PowerColor Go! Green HD7750 1GB GDDR5 AX7750 1GBD5-NH [PCIExp 1GB]を使っていた。交換前の機種、交換後の機種を見ればわかるように、僕は基本的にファンレスのビデオカードを好んで使用している。ファンレスが好きなのは少しでも静音にしたいから(僕の使い方ではセミファンレスのカードでも全く問題ないだろうけど)。ケース内で、PCIスロットにAbeeのVGAクーリングユニットを介して12cmファンを600rpm程度でゆるゆると風を当てている。
正直、ゲームはしないので高性能なビデオカードは必要ない。なんなら、iGPUでも問題ないんじゃないかぐらいの勢いだ。ので、今回の買い替えも単に新製品へのロマン程度の意味合いしかない。あと、個人的にRadeonよりはGeForceの方が好きと言うのもある。どっちみち、ディスクリートファンレスビデオカードと言うジャンルは絶滅危惧種なので、まともに買い換え検討に値する商品が数年に一回しか出ないと言うのもあるけど(実際、交換前の1GBD5-NHは2012年に購入した商品だ)。
導入する環境
現在の環境は以下の通り。結構古め(主要部品は2011年に購入して、少しづつ中身を更新して今に至っている)。
OS:Windows 7 Professional 64bit SP1 WindowsUpdate等は基本的に可能な限り最新版
CPU:Intel Core i5-2500K、Sandy Bridge
マザーボード:ASUS P8H67-M EVO Rev.3
メモリ:CFD W3U1600HQ-8G [DDR3 PC3-12800 8GB 2枚組] x2セットで計4枚、32GB
ビデオカード:PowerColor Go! Green HD7750 1GB GDDR5 AX7750 1GBD5-NH
SSD:PLEXTOR PX-512M5P SATA
HDD:WD WD80EFZX SATA
サウンド:LUXMAN DA-100 USB-DAC-HPA
モニタ:NEC P242W(プライマリモニタ、DVI接続)、Panasonic TV TH-L23X5(セカンダリモニタ、HDMI接続)
SandyBridgeのH67世代のマザーボードでPCI-e Gen3.0には対応していないが、現時点で使用している1GBD5-NHだって3.0世代のビデオカードだけど問題なく使用できているので、NE5105T018G1-1070Hでも特に問題ないだろうと踏んだ。ネットで古いマザーボードだとダメだと言う書き込みも特に見なかったし(と言う油断が後で痛い目を見るのだが)。
導入後、最初のつまづき
購入して、1、2日で商品到着。サクッとカード交換して…と思ったがドはまりしてしまった。
まず、Windowsの動作不安定の可能性等は置いておいて、旧カードのAMD Catarystのドライバは削除せず、PCの電源を落としてビデオカードを交換した(これはあまり好ましいやり方ではないが、僕のところで発生したトラブルの原因になったりはしない)。
が、交換後、起動したところモニタが真っ暗なまま。BIOSすら表示されない。
BIOSすら表示されないと出来ることはあまり多くないのだが、仕方なく一応検証可能な限りで接続を試してみると以下の通りの現象だった。
(1) そのままHDMI接続をPanasonic、DVIをNECとするとHDMIは何らかの信号が来ているっぽいが真っ暗なまま(HDMI信号がありません表示は消えるので、何らかの信号は出ている模様)、DVIは無信号(信号無しでスタンバイになる)
(2) HDMIケーブルを外しDVI接続をNECにすると、DVIは何らかの信号が来ているっぽいが真っ暗なまま(信号種別が不明なためか、入力信号は1920×1200と言うモニタ側のオンスクリーン表示は出るが、PCからの出力はない)
(3) HDMIケーブルでNECと接続すると、HDMIでNECモニタ側に何らかの信号が来ているっぽいが真っ暗なまま(信号種別が不明なためか、入力信号は1920×1200と言うモニタ側のオンスクリーン表示は出るが、PCからの出力はない)
(4) 割と強引に、DVI、HDMIを両方つないで両方NECにつないでみたところ、HDMIは何らかの信号が来ているっぽいが真っ暗なまま、DVIは入力信号自体がなし
まあ要するに一応電源認識的なものはしているが出力されない状態である。HDMIとDVIの接続による挙動を見る限り、NE5105T018G1-1070HはBIOS時には一か所からのみ信号が出力されて、DVIとHDMIだとHDMIが優先になるようである。
最初はPCI-eスロットへの差込が甘いのか、などと疑って何回か抜いたり差したりしてみたが映らないのは同じだった。仕方なく1GBD5-NHに戻すと問題なく画面は映り、BIOSもOSも起動した。
元のカードにした状態でならBIOSを確認できるので一通り確認してみたが、映像出力先はPCIE優先(内蔵グラフィック無効)になっており、BIOSバージョンも現時点で最新の3703になっている(と言っても2013年5月リリースの古いものだが)。
と言うことで、一通りのチェックでは問題が発見できず、これは初期不良か相性問題しかない、と結論付け、ドスパラのサポートにメールを送り、初期不良の可能性疑いで一度引き取ってもらった。
が、ドスパラで検証してもらったが初期不良ではなく、BIOSの起動も高負荷テストでも不具合は確認されなかった。ので仕方なくもう一度送り返してもらった。
まあ、要するに相性問題の発生でほぼ確定である。
強引に解決した
このままだと『当方環境では相性問題が出ましたが、販売店で初期不良はないことを確認してもらっています』の但し書きをつけて新古品でヤフオク送りである。
さすがにそれは悲しいので、なんとかならないかとさらに(ちょっと無茶な部分もある)検証を試みた。
なお、この時点で改めてネットで検索してみたが、P8H67-M EVOとGTX1050Ti(を始めとするPascal世代のビデオカード)の動作報告はネットに転がっており、ビデオカードの世代的な問題のせいで起動不可ではないことを確認した。
また、ネット上で似たような症例を検索していたところ、問題が発生して起動しない場合は、内蔵GPUに切り替えて起動させて(ビデオカードはPCI-eに差したまま)、OSのデバイスマネージャを見た時に不明なデバイスとして認識されてビデオカードのドライバもインストールできない、と言う状態になるらしいことが分かった。
そこでもしや、と思い僕の環境でも一旦内蔵GPUで立ち上げて表示確認すれば何かわかるんじゃないか、と思いつき以下の手順でビデオカードの(OS上での)認識の確認をしてみた。
(1) まずは1GBD5-NHを差した状態に戻し、モニタ出力を確認できる状態でPCを起動し、BIOSメニューに入る
(2) BIOSメニューでノースブリッジ設定からビデオ設定に入り、出力先を『PCIE』ないし『AUTO』から『IGFX』に切り替え、BIOS設定を記憶させ再起動。再起動後OS起動までは必要ないのでOSが立ち上がる前に電源を落とす
(3) ビデオカードをNE5105T018G1-1070Hに交換する。DVIないしHDMIケーブルはいったんはマルチモニタを避け、どちらかのケーブルだけを内蔵グラフィックの出力に繋げる(僕はHDMIだけ接続した)
(4) OSを起動させる。OS上でデバイスマネージャを起動させてNE5105T018G1-1070Hがどう認識されているか確認する。※なお、この時は内蔵グラフィックのドライバ等無視しているので640×480,16bitとかの酷い出力だったりする
と言う手順を行ってみたところ、なんとデバイスマネージャ上で『標準VGAグラフィックアダプター』が2個認識されている状態になっていた(なお、このマザーボードはZ68チップセットではないのでVirtu等はなく、iGPU/DGPU両方からの同時出力は多分無理である)。
『あれ、OS上は一応PCI-eのビデオカード認識してるじゃん』と思い、ここでnVidiaのドライバをインストールしたところ、無事にインストールできてしまった!(nVidiaドライバはインストール前に環境チェックをして、GeForceカードが刺さっていない場合はインストール自体出来ない)。
で、再起動後、なんとなく思いつきでそのままNE5105T018G1-1070H側にDVIケーブルを差してみたところ、なんとOSが無事表示されたのである。…なんじゃこりゃ。
その後、ビデオカードをとっかえひっかえしたり、BIOSの設定をいろいろいじったり、等々行った結果、以下の通りであることが分かった。
■BIOSのビデオ出力設定が、『PCIE』『AUTO』の場合はNE5105T018G1-1070Hを差すと画面表示がされず(PCI-eのビデオカード側にケーブルを差しているときでも、マザーボード上の内蔵ビデオカード側にケーブルを差しているときでも)、BIOSが起動できずOSも起動できない。この状態に陥るとBIOSの設定変更も出来ないので一度PCI-eのビデオカードを抜かないといけなくなる。PCI-eのカードを抜いていると、BIOSの設定が『PCIE』になっていてもマザーボード側の映像出力からBIOSもOSも起動できる。
■BIOSのビデオ出力が『IGFX』の時は、BIOSはマザーボードの映像出力からもPCI-eのビデオカード側の映像出力からも表示される。が、NE5105T018G1-1070Hの場合はBIOSの表示はHDMIからしか表示されない。旧ビデオカードの場合はBIOSの表示もDVI/HDMIデュアルでミラーリング表示されていた。
■BIOSが『IGFX』になっているとBIOSのチェックを通過してOSに正常にPOSTされ、OSの起動途中でOSにビデオカードのドライバが読み込まれたと思しきタイミングでPCI-eからDVIで接続しているモニタも映るようになる。
■OSが完全に起動するとNE5105T018G1-1070HでもDVIもHDMIも正常に認識され、普通にデュアルモニタで使用できる。
なんとも奇妙な状態だが、一応画面が映るようになり、使えるようになった。
懸念点としては本来プライマリモニタとして使っているNECのモニタ側にはPC起動時はBIOSも『Windowsを起動しています…』も表示されず、ログイン画面がいきなり表示される状態になる。セカンダリとして使っているPanasonicのテレビ側ではBIOSが表示された後いったん画面出力はただの黒だけになり、Windowsにログイン後にもう一つのモニタとして改めて認識される状態になる(BIOSは内蔵グラフィックからもPCI-eグラフィックからも表示され、OS起動中は内蔵グラフィックからのみ表示され、OSが完全に立ち上がるとPCI-eグラフィックからのみ表示される)。これ、Windwowsが正常に起動しないときのセーフモード選択画面とかがどうなるのか不安ではある。
また、内蔵グラフィックアダプタがOS起動時にも一応認識され、ディスプレイアダプタが2個ある状態でちょっと気持ち悪くもある。
おそらく、こんな不可思議な状況に陥っているのは、最新のビデオカードに対して、このマザーボードはハードウェアとしては対応しているがBIOSが対応できていないからなのだろう。なのでBIOS上でビデオカードの出力を認識させるような手続きの中でうまく動作せず止まってしまうが、BIOSの間だけ誤魔化してOSにバイパス出来てしまえば、普通に使えると言う状態なのだと思う。
SandyBridgeと言えば既に6年ぐらい前のチップセットなので、こういうちょっと無理のある状態になってしまうのも致し方ないのか、といったんあきらめてこのまま使うことにした。この状態で動くことは確認できたので、AMDのCatarystドライバは削除したのは言うまでもない。場合によってはOS再インストールした方がいいかなとも思っていたが、今のところやらなくても特に不具合なく動いてくれそうである。
交換前後の性能確認
最初に書いたとおり、僕は別にゲームをするわけでもないので、GPUのベンチマークソフトをわざわざ入れて数値の変動を確認するのは面倒なので省略した。
一応、Windows7のWEI(Windowsエクスペリエンスインデックス)は7.4→7.9に大きく向上したので満足はしている。これでビデオ性能でもカンストで、残るはCPUとメモリになった。このPCは構想で1、2年先にCPU、M/B、メモリ(とできればケース、電源、可能ならSSDも)を交換しようと考えているのだけど、その時には同時にOSもWindows10に入れ替えようと思っているので、WEIでCPUとメモリのカンストを見る機会はなさそう。
交換作業の様子
届いたパッケージ。ビデオカードのパッケージの大きさとしてはまあ標準的なものだろう。
2スロット分を占有する。PCIスロット側はハニカム構造のメッシュ。出力はDVI-I、HDMI、DPがそれぞれ1つづつ。
交換前のカードと並べてみた。1GBD5-NHの方が放熱フィンは若干小さい。
ずいぶん手抜き写真だが厚み方向の比較。NE5105T018G1-1070Hの方がわずかだが厚い気がする。そして1GBD5-NHの方はだいぶ埃で汚れている。
交換後のケース内。交換前はPCIに差してあるVGAクーリングユニットと若干のクリアランスがあったが交換後はほぼぴったり隣接している。が干渉はしないので大丈夫。