フィルムスキャナー KFS-500mini 簡単なレビュー
最近、「大学の先生の還暦のお祝いやるんだけど、昔の写真ないでしょうか?」と言う相談が来た。
古い写真(ネガ、リバーサル)はちゃんと保存してあるのだけど、それをデジタル化しようとして困った。以前は大学の設備のフィルムスキャナ(CoolScan IIIとかだったと思う)を使ったり、自分用にフィルムスキャナ兼用フラッドベッドスキャナ(EPSON GT9300UF)を持っていたりしたのだけど、フラッドベッドスキャナはWindows7 64bitのドライバが配布されていなかったり、そもそも古くなってきたこともあったりで、だいぶ前に廃棄してしまっていたのだ。
で、今の手持ちの複合機のフラッドベッドでなんとかフィルムスキャンできないものかと、原稿台の上にフィルムを載せてみたり、さらにその上からライトボックスをあてがったりしてみたものの、どうにもまともな読み取りは出来なかった。
で、『さすがに写真趣味にしてるのにフィルムをデジタル化できる環境が全くないって言うのもアレだな』と思い、安物でいいからとりあえずスキャナを、と言うことでケンコー・トキナーのフィルムスキャナー KFS-500miniと言うのを買ってみた。今回はその簡単なレビュー。
結論から先に書くと、
■ネガスキャンには結構使える。ポジスキャンにはほとんど役に立たない。
■スキャナと言うより、キャプチャに近い商品なので、フィルム読み込み式/フラッドベッド等に比べて、取り回しが非常に楽。
と言ったあたりだろうか。
外観、スキャン画面など
外観的にはこんな感じ。(サイズの比較対象にマウントしたリバーサルフィルムをひとつ置いてみた)
非常にコンパクトだと思う。スリーブ用(ネガでもリバーサルでも)・マウント用(主にリバーサル用、一度に3枚セットできる)のホルダーが付属している。
読み取り部分に(正確には発光面か)ゴミが付着する場合があるので、付属のブラシ?を使って清掃できる。
フィルムの読み込みには、ArcSoft MediaImpression 2と言う付属ソフトを利用する。付属ソフトのシリアルはパッケージに書いてある。
読み込み画面はこんな感じ。読み込み画面はライブビュー状態で常に読み込まれているので、リアルタイムで装着状態や撮影したいコマを確認できる。安物の素子なので、デジカメ等の背面LCDに比べるとタイムラグやこんにゃく現象など結構酷くはあるが、いちいちプレビュースキャンで待たされるフィルムスキャナーよりはずっと待ち時間が少なく、楽である。
スキャンも、『パシャッ』と言う効果音が出て一瞬で終わる。要するにラインセンサーのスキャナーではなくて、デュプリケータなんかと同じように単に撮影しているだけなのだ。
なお、プレビューの画面ではアスペクト比が3:2ではないが、実際にスキャンされる画像はちゃんと3:2になる。またプレビューではだいぶトリミングされてるように見えるが、実際にスキャンされる画像はそこまではトリミングされてない(正確に比較できないが97、8%ぐらいは読み込んでると思う)。
プレビューにわざとコマ間の枠を表示させて確認する感じだと、タル型の歪曲があるように見えるが実際のスキャン画像はちゃんと補正されてると思う。
実際に読み込んだサンプル
実際に読み込んだ写真がどんな感じか、いくつかサンプルをとってみて、過去に使っていたフィルムスキャナ兼用フラッドベッドスキャナ(EPSON GT9300UF)の画像と比較してみた。
まずはネガの写真から。神戸ルミナリエの夜景、フィルムはKonica Centuria 200S。レンズはたぶんFA 43mm F1.9 Limited。
これが以前にGT9300UFでスキャンしたサンプル。
GT9300UFは比較的にネガ、特に夜景が苦手でこれは読み込むのに結構苦労したサンプルだと思う。
KFS-500miniで読み込んだサンプル。結構ラティチュードを広く読んでくれているのが分かると思う。
もう一枚ネガのサンプル。ハワイにて、フィルムはKodak GC 400-8とある。肖像権怒られそうな気もするけど、まあ顔が影になってるしいいかなあと。
GT9300UFでスキャンしたサンプル。
明るい景色のはフラッドベッドでもあまり問題はなかったけど、色再現は結構ひどかった。
こっちがKFS-500miniで読み込んだサンプル。両方のサンプルともほぼ素の読み込みだけであまり手を加えていない。色味がだいぶ違うのはともかくとして、空の濃淡の模様がこんなにも違うのはなぜだろう。
フィルムを見る限りではKFS-500miniの濃淡の方がおかしいように見えるが、何とも言い切れない。
次にリバーサルの写真から。長野県臼田天文台にて、フィルムはFuji Torebi 100C。レンズはたぶんTAMRON SP 90mm F2.8 MACRO。
GT9300UFでスキャンしたサンプル。仕上げ用に周辺減光など少しいじってあるので、サンプルには若干微妙かと思ったけど、ポートレートの良いのがなかったので。
GT9300UFはポジならスキャンは非常に楽だった。
KFS-500miniで読み込んだサンプル。素の状態ではコントラストきつくて酷いことになってる。
48bit-tiffで読み込んでコントラストを目いっぱい下げて微調整してこんな感じ。
もう一つリバーサルの写真のサンプル。愛知県常滑にて、フィルムはFuji RDP-III。レンズはたぶんFA 77mm F1.8 Limited。
KFS-500miniで読み込んだサンプル。この写真は焼き物のオブジェの色が白いか黒いかだけで、意外にコントラストはきつないのか、素で出してもコントラストはそれほど違和感ない。
微調整してこんな感じか。この写真で比較すると結構トリミングされているのが分かる。
ざっくりとこんな感じ。個人的にはリバーサルは少しでも明るめのところが全く粘らず白飛びしてしまうのがきついと思う。リバーサルにはこのスキャナはあくまで仮スキャンとして、もっと良いスキャナを買った方がよさそうだ。
一方でネガならさくさくスキャンできるし、素の状態で結構使える状態に読んでくれるので、かなり便利に使えるかと思う。